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第五話 召喚獣とラビリンス

مؤلف: 空蝉ゆあん
last update تاريخ النشر: 2025-11-04 08:00:31

ラリアは何が起こっているのか理解する事が出来ない。繋がりのないサイレンスとミハエルは互いの耳元で何かを話している。内容を聞きたくても聞く事が出来ない。何故なら唇を動かしているだけで言葉を発していないからだ。自分に向けられていた興味が逸れた事を知ると、安堵する。サイレンスの表情はどこか遠くを見つめて、何かに囚われているように感じていく。

「……今日はこの辺で。ラリア様、女性をたらし込まないようにお気をつけください」

「ああ……」

本人からしたらたらし込んでいる意識は全く無い。その事を見抜いていたサイレンスは思い出し笑いをすると、何事もなかったかのようにスタスタと歩いていく。その背中から忠告を下す言葉が聞こえてくるような気がして、心が波打つ。

「私達も行きましょうか。ラリア様」

「そうだな」

予想外の人物との出会いはラリアにとって最悪な未来を奏でるきっかけとなっていく。サイレンスの微笑みは彼の心に恐怖を植え付け、離す事はない。こんな時にラビリンスがいれば、嫌な予感も全て払い除けてくれるだろう。興味を抱いていたのは事実だが、どうしてこんな時にラビリンスの事を考えているのか分からない。

簡単に終わるはずの対面も、複数の物事が関与したせいでゲルツシュタインに戻る事が出来なくなってしまった。全ての計画が崩れた事はラリアとラビリンスを近づけるきっかけを作ったのかもしれないが、サイレンスの存在が全てを無にしてしまう。

「ミハエル、彼女を知っているのか?」

踏み込むか迷っていたラリアは自分の知らないミハエルの表情を思い出しながら、問いかけた。どんな事でも包み隠さず教えてくれる。いつもの彼ならきっとそうだろう、そう自分に言い聞かせながら、待ち続ける。

「私がラリア様と出会う前の事ですのでーー」

それ以上の言葉を聞き出す事はなく、二人は無言で用意された部屋へ向かっていった。

□□

そんなラリアの事を知らずに、一人部屋でくつろいでいるラビリンス。いつもは何か刺激はないかと日常の変化を求めていたが、いざ環境が変わりそうになると落ち着かないようだ。滅多として来客が来る事などないのに、今日はいつもと違った。その様子を召喚獣ルルが心配そうに見ている。

「うきゅう?」

「ルル、なんでもないからね」

「みゅー」

召喚獣と言ってもルルはスライムと同じ種族にあたる。通常話す事は勿論、意思疎通をする事も出来ないはずだ。それでもミミコットが創造する存在はまるで話をするかのように、可愛らしい鳴き声を出している。ルルの中心には核がある。その核を貫くとスライムと同じで絶滅してしまう。そんな事にならないようにある魔法を付与していた。対象をどんな刃からも守る完全無欠の結界魔法『ユルダ』この魔法が対象者へ一度でも付与された場合、永遠と続く。どんな攻撃も無効化し、あらゆる脅威を排除してくれる特別な結界魔法の一つ。

ラビリンスにとってルルは家族以上の関係性。ルルの存在を公にしてしまうとゲリアに封印される可能性が高い。そんな事にはならないように、ルルが脅威ではない事を示そうと考えていた。ミミコットはルルの存在を隠すようにラビリンスに忠告したが、言う事を聞くとは思えない。

ツンツンとルルを優しく突くと、プルプル震えて喜びを表現している。どんな姿にも変身する事が出来てしまう。ラビリンスの大切な家族の一人だった。何かあるたびルルに話しかける。すると嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねて喜びを表現していた。

ルルとの関わりは荒んだ心に癒やしを与えてくれる。

「ねぇねぇ、ルルに聞いてほしいの」

「むにゅう?」

「今日ねーー」

半日眠っていたが、それでも密度の濃い時間を過ごす事が出来た。ルルにラリアとの事を話し始めたラビリンスは、瞳を輝かせ楽しそうに語っている。主人の嬉しそうな姿を見ていると、嬉しくなったのかいつもよりも高速で動き出したルルがいた。

嫌いなはずなのに、どうしてだか目が離せない。自分の本当の気持ちに気付く事が出来ないラビリンスは嫌味を混ぜながらも、彼に対する気持ちを表面に表していった。ラリアとの出会い、初対面で感じた失礼さ、そして手を握られ、キスを落とされた時の気持ち。何から話していいのか考えなくても、自由に話せるこの関係性を大切にしていく。

きっと彼は知らないだろう。ラビリンスがどんな感情を抱き、ラリアを見つめているのか。それを知る時は、きっとラビリンス自身が自分の気持ちに気付く時なのかもしれない。

「これからどうなるんだろう」

自分が倒れた事が原因でゲルツシュタイン帝国に戻れなくなってしまったラリアは、この宮殿に滞在する事になった。簡潔に終わらす予定だったのだろう。同じ場所に彼が泊まっていると考えると、心がソワソワする。正体の掴めないこのもどかしさを隠すようにルルを抱きしめながら、ベッドに雪崩込んでいった。

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